兄の日

「ねえお兄ちゃん、六月六日は"兄の日"なんだって」
 妹の声に本から顔を上げた秋本遥は、その瞬間、彼女の顔を見て嫌な予感に襲われた。だが、そのわくわくを抑えきれていない"にまにま"した笑顔を前に、兄としてそれを無視することもできなくて、しぶしぶ尋ねる。
「そうか……それで?」
 なんとなく展開は読めていた。そして、兄好きを公言する天真爛漫な妹は、その予想にまっすぐ応えた。
「兄妹デートしよ!」
 秋本遥はため息をつきながら、案の定な妹を前に、どこに連れて行かされるのかと頭を悩ませるのだった。
「ねえお兄ちゃん、六月六日は"兄の日"なんだって」
 兎束美海は、ソファで読書にいそしむ兄に、そんな話を投げかけてみた。
「そんな日があるなんて知らなかったよー。世の中にはいろんな日があるんだね」
 そこにはなんの思惑もなかった。ただ、今日たまたま知った面白い話を、兄にしてみただけだった。なんでもない些細な日常。
「へぇ。そうか、兄の日か」
 だが、本から顔を上げた兎束空雅は、そんな日常を一言で「特別な日」に変えた。
「そんな話を聞いちまったら何もしないのはもったいねぇな。よし美海、俺とデートしよう!」
 面白いことを思いついた少年のような笑顔。兎束美海はそんな兄が好きだった。
 

そんなわけで兄の日

いやー、三人称苦手。
どうもこんばんは、ふぁいんです。
冒頭の、小説とも呼べないプチエピソード、どうだったでしょうか。遥君や那都葉はまだマシとして、久しぶりに兎束さんや空雅さんを動かしたら、なんかもうキャラがどんな感じだったかよく分からなくなってて焦りました。しかもいつもの遥君視点ですらなかったので、この短文を書くのに一時間半もかかってしまって驚きです。
さて、というわけで今日は「兄の日」です。なぜ今日なのかというと、本日6月6日は、「双子座の期間、5月21日から6月21日のほぼ中間の日」なんだそうです。双子の兄のほうの日、ということなのでしょうか。そこはよく分かりませんが、理屈としては、昔、短編を書いたことがある「妹の日」と似たような感じですね。今日が兄の日であることにもう少し早く気づいていれば、今回もちゃんと短編というかたちでまとめたかったですが……まあ、仕方ありません。
それでもなんとか、表現したいことはなんとなく表現できたような気はしています。それはすなわち、遥君と空雅さんというふたりの兄の姿。
同じ言葉を似たようなシチュエーションで妹から言われたふたり。しかし、対するリアクションは大きく違いました。この差がなんなのか、この短文から感じ取っていただけるか自信はないのですが、もし伝われば嬉しいなと思います。
では今日はこの辺で。あー、なんとか日付変わる前に書けて良かった(笑)
 

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