Blueskyってなんなのか “分散型SNS版Twitter”が気になったので色々まとめてみた~

2024年2月7日、日本のSNS界隈が少しざわついていた。

旧Twitter社の元CEO・ジャック=ドーシー氏が立ち上げた分散型SNS「Bluesky」が、誰でも登録可能になったというのだ。

同SNSは、旧Twitter社がイーロン=マスク氏によって買収された2022年後半頃~2023年初頭にかけて、一度話題に上っていたことを記憶している。Twitterはもう終わりなのではないか、次なるSNSはどこを選ぶのが正解なんだ!と、SNS界隈がてんやわんやする中で、有力候補のひとつとして列挙されていたもののひとつだったのである。

それはそうだ、なにしろ前述のように、「Bluesky」はTwitterの生みの親、ジャック=ドーシー氏が生み出したSNSなのだ。それゆえに、見た目も使い勝手もTwitterそっくりとあって、移行先として選択したくなる気持ちはもっともだろう。だが、その時点では、多くのユーザは青い空へと飛び立つことができなかった。

なぜか。「Bluesky」が未完成ゆえに、招待制を取っていたからである。

すなわち、既存のBlueskyユーザに「招待コード」を発行してもらわなければ、サービスに登録することは叶わなかった。もちろん、1ユーザが招待できる人数は限られていたため、狭き門となっていたのである(※なお、一時期、バグによって招待数の上限がなくなる「招待コード無限祭り」状態になったことがあるらしい)

ゆえにあの頃、招待してくれるツテもコネもない私のような多くの市民は、青い空に希望を抱きながら、青い鳥を失ったSNSで呟き続けるしかなかった。だが、そんな空が、ついに全人類に開かれることになったのが、「2024年2月7日」なのである。

分散型SNS「Bluesky」、招待制を廃止――もちろん私もさっそくアカウントを作成した。そしてここ数日使ってみたわけなのだが、同時に、「そもそも分散型SNSってなんだっけ?」という疑問についても調べていたため、今回はそれらをまとめていきたい。

分散型SNSとは

では早速、まずは「分散型SNS」についてざっくり書いていきたい。

「SNS=ソーシャルネットワーキングサービス」はさすがに分かるとして、「分散型」とは何なのか。一体何が分散しているというのか。手始めに、Windowsに搭載されたAI型チャットボッとサービス「Copilot」くんに質問をしてみる。

質問:分散型SNSとは

個人的には、なかなかに要点が絞られた回答に思えるものが返ってきた。まず概要をざっくり伝え、次に特徴を羅列し、最後に代表例を挙げる。なるほど、結構優秀な気がする。

とはいえ、分かりやすい説明かと言われると、人を選ぶだろう。少なくとも、小学生にこれを伝えてニュアンスが伝わるかどうかは非常に怪しい。

そこで、これを人力で噛み砕いてみると、ざっくり以下の理解になる(多少の語弊はあるかもしれないが勘弁して欲しい)

今までのSNS:
中央集権型=リーダー的偉い人がいて、サービスを管理している。
例えばTwitterなら、「Twitter社」という会社があって、社長さんを中心に、そこの社員の人があれこれ頑張ることで、「Twitter」というサービスを提供してくれている。
言うなれば、「Twitter」という国があって、総理大臣として社長さんがいるイメージ。最終的にあれこれ決める偉い人がいる状態で、サービスが動いている。

分散型SNS:
特定のプラットフォーム事業者にデータ管理を依存させない=サービスを管理する偉い人はいない。
特定のルールに基づいて動く国の中で、国民が自由に県を作ったり街を作ったりしているイメージ。あちらこちらに街ができて(=分散型)好き勝手やってるけど、基本的なルールだけは統一されているので、街同士の行き来は自由にできる。

どうだろうか。多少は分かりやすくなったかもしれないが、おそらく、まだピンと来ていない人もいるはずだ。

「管理する人がいないって言っても、Blueskyっていうサービスを作った人はいるわけで、それが管理者じゃないの?」と、疑問が浮かぶ人もいるだろう。

そんな方のために、さらに前提となるお話をしてみる。

Blueskyは本質的に「SNSの提供者」ではない

分散型SNS「Bluesky」は、「Bluesky PBLLC」によって運営されている。この「PBLLC」が何なのかと言えば、「Public Benefit Limited Liability Company」の略であり、「公益合同会社」と訳せるようだ。では、これは普通の株式会社とどう違うのか。

細かく言えば色々とあるのだろうが、ざっくり言えば、「お金を儲けることを目的としていない会社」だと理解してしまって良いだろう。Blueskyの目的は、Twitterとは違い、SNSの提供を通じて収益を上げるというところにはない。

Blueskyは、「AT Protocol」(あっとぷろとこる)の普及を目指しているのである。

「AT Protocol」とは

いきなり聴き馴染みの単語が出てきて面食らったかもしれないが、「AT Protocol」とは、「Blueskyの基盤になっている基本ルール」のことだと思ってもらって良い。

そもそも、エンジニアでなければ「プロトコル」という言葉に馴染みがないと思うが、これは、「ルール・取り決め」のことだと理解しておけば十分だと思う。

こうしたプロトコル(ルール)は、ITの世界では無数にあって、それらに従ってプログラムが動くことで、皆さんがお使いのスマホやパソコンが動作している。身近な例を挙げると、URLを見てみてほしい。先頭に「https」とついていると思うが、実はこれも、「HyperText Transfer Protocol Secure(ハイパーテキスト トランスファー プロトコル セキュア)」という、データのやりとりのルールを定めたプロトコルの略である。今見ていただいているこのページは、HTTPSというプロトコルによってデータのやりとりが行なわれたことで、表示できているというわけだ。

お分かりいただけるだろうか。繰り返しになるが、別にちゃんと理解しなくて大丈夫だ。「ふーん、まあ、なんとなく分かったような気がする」くらいで十分である。

話を戻すと、分散型SNSである「Bluesky」は、「AT Protocol」というプロトコルに基づいて動作している。そして、そもそも「Bluesky PBLLC」という公益合同会社は、「AT Protocol」の普及を目指している。つまり何が言いたいかと言うと、分散型SNS「Bluesky」は、あくまで「AT Protocolを使えば、こんなSNSが作れるぜ!」というデモンストレーション的サービスに過ぎないのである。

確かに、「こんなルール作りました」と言われてもイメージが湧きにくいが、「こんなことができます」と言われれば興味をそそられる。そして今、そのデモンストレーション的サービスが注目を浴びているわけだから、Bluesky PBLLC的には万々歳だろう。

分散型SNSの本当のすごさ①

ここまでで、ひとまず、「AT Protocol」こそが目的であることは伝わったと思う。では、そもそもなぜこんなものを作る必要があったのか。それを考察してみたい。

「AT Protocol」最大の特徴は、「誰でも使える」ということだ。もちろん、相応の知識は必要になるが、その気になって勉強すれば、誰もが「AT Protocol」を使って、分散型SNSを作ることができる。そのメリットは、そう、Copilotくんが言っていた「民主性の高さ」である。

SNSをよくお使いの方であれば、一度は、「アカウントをBANされた」という話を聞いたことがあるだろう。BAN=アカウントの凍結または削除によって利用できなくなること、であるが、これはなぜ起こるかと言えば、管理者がいるからである。

極端な話をすれば、旧Twitter、現Xに投稿したポストは、社長であるイーロン=マスク氏の意向で削除することが可能だ。もちろん、不当に削除すれば批判はまぬがれないが、「削除できる」という事実は間違いなくそこにある。これが「管理者がいる状態」である。

分散型SNSでは、各自が自由にSNSを作れるため、特定の個人の意向に縛られるということがない。もちろん無法地帯ではないので、それぞれのSNSにルールは設けられるだろうが、それに沿って、自分達の発言を自分達で適切に管理すれば、そこに他者の思惑が介入する余地はないのだ。

また、もっと分かりやすいメリットを挙げれば、個人情報を収集されることもなくなる。我々が個人情報の取り扱いを含む利用規約に、きちんと読まないまま同意してしまうのは(もちろん、本来はきちんと読むのが望ましい)、サービスを使うには同意する以外の選択肢がないからだろう。だがそれは本来、望んでいないことかもしれない。広告だって、できれば表示されたくないだろう。しかしながら、これまでのSNSでは、個人情報は収集されてきたし、広告も表示されてきた。なぜか。SNS自体が、それによって収益を上げるビジネスモデルだからである。

分散型SNSでは、それがない。あなたの情報を欲する「管理者」がそもそもいないからだ。これは、個人情報保護がたびたび議題にあがる現代にフィットしたモデルと言えるだろう。

分散型SNSの本当のすごさ②

だが、分散型SNSの魅力はこれに留まらない。もうひとつ大きな特徴がある。

先ほど私は、分散型SNSの説明において、「あちらこちらに街ができて(=分散型)好き勝手やってるけど、基本的なルールだけは統一されているので、街同士の行き来は自由にできる。」と、しれっと書いた。

これについてより詳しく解説したい。

「Bluesky」というSNSが、「AT Protocol」で動いているのは説明したとおりだが、これのすごさは、同じプロトコルで別のSNSが作られたときにある。

例えば、私が独自SNSとして、「AT Protocol」を使って、「FINE SNS」というものを作ったとしよう。そして、Blueskyを使っているユーザが、FINE SNSも使いたいとする。

従来のSNSのイメージでは、FINE SNS側で新たにアカウント登録を行なって、FINE SNSの利用を開始する必要があった。BlueskyとFINE SNSは、城壁に囲まれた城下町のように区分けされ、それぞれで市民登録しないと入ることができなかったはずだ。だが、分散型SNSは、ここが大きく違う。

分散型SNSでは、Blueskyのアカウントを持っていれば、そのままFINE SNSを覗くことができる。そして、もしFINE SNSのほうが使い勝手が良さそうなら、Blueskyからこれまでのデータを引っこ抜いて、FINE SNSに引っ越してくることができるのだ。

これが、「自分で情報を管理する」ということだ。あなたの家の荷物はあなた自身が管理し、引っ越しの際には持ち運ぶだろう。それと同じことが、SNSで容易にできる。普段は住みよい場所で活動し、ちょっと気になったらお隣さんに遊びにいくことができる。なぜなら、基本ルールが同じだからだ。

さながら分散型SNSは、パスポート不要で行き来できるEU加盟国のようなものなのである。

補足だが、引っ越しができるのは、あくまで「同じプロトコル上につくられたSNS同士」に限られる。

分散型SNSの基盤になるプロトコルはいくつもあり、例えばMisskey(ミスキー)は、「ActivityPub」(あくてぃびてぃぱぶ)というプロトコルに基づいて作られている。

この場合はプロトコルが違うので、引っ越せない。分散型SNSだからなんでも行き来できるわけではないことは留意しておこう。

で、結局Blueskyを使うべきなのか

というわけで、ここまでの長々とした説明を読み切ったあなたであれば、分散型SNSとは何なのか、Blueskyとは、AT Protocolとは何なのかについて、なんとなく理解できたことだろう。

それでは最後に、一番大切なことを語っておくことにする。

「Bluesky」、使ってみてどうだったのよ?という話である。

Xとの比較

まずは分かりやすく、似ていると噂のX(旧Twitter)と比較してみよう。

これはどちらも、スマホのアプリから見た私のプロフィール画面である。

左(スマホからご覧の方は上)がX(旧Twitter)で右(スマホからご覧の方は下)がBlueskyだが、そっくりなことが分かるだろうか。

ヘッダー画像があり、アイコンがあり、プロフィールの説明が掲載されている。その下に、ポスト(投稿)、返信、メディアといったタブが並ぶところまでほぼ同じだ。また、右(Bluesky)側の投稿をよく見てもらうと分かるとおり、返信、リポスト、いいねのアイコンが並んでいるのも見慣れた光景だろう。もちろん新規ポストは、右下の青いボタンを押すことで可能である。

これはもう、似ているというより同じと言ってもいいくらいだろう。そもそもTwitterを作り上げたジャック=ドーシー氏が関わっているのだからさもありなん……というより、実はそもそもBlueskyは、ジャック=ドーシー氏がTwitter社にいた頃に立ち上げたプロジェクトなので、いずれTwitterも、AT Protocolに対応させる気だったに違いない。

つまり何が言いたいかと言うと、Blueskyは、Xを使う感覚そのままに使うことができるというわけである。これだけでも、始めるにあたってのハードルはだいぶ低くて済むだろう。

だが、だからといって、BlueskyがXと全く同じではないことには注意しておく必要がある。Blueskyは、招待制こそ廃止されたとはいえ、まだまだ年月の浅いSNSだ。よって、色々と実装されていない機能がある。ざっと比較してみよう。

機能XBluesky
文字数120300
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リポスト
画像投稿
動画投稿××
アカウントのフォロー
アカウントのミュート
アカウントのブロック
DM×
アカウントの非公開
(鍵アカウント化)
×

基本的なことはできるが、動画、DM、鍵アカウントに対応していない点には注意が必要だ。日常のちょっとした動画を投稿したり、ユーザー同士で個別にやりとりすることはできない。また、公開範囲を絞ることもできないので、ひっそり始めたいという方は対応を待つ必要があるだろう。

私はすでにBlueskyを結構気に入っている。なぜなら、文字数が300文字まで対応しているからだ。私のような物書きは(と、一括りにすると他の物書きに怒られそうだが)、こうした投稿すら文字数が多くなりがちである。そのため、Xを使ってきた10年以上の中で、たびたび文字数上限に阻まれ、頑張って減らすということを何度も経験してきた。

だが、300文字となるとどうだろうか。さすがの私も、それだけの文字数を与えられれば、1つの投稿におさめることができる。それでいて300文字という上限は、さらっと読むにも長すぎない文字数ではないだろうか。これ以上長くなると、読むのが少しつらくなってくる。同じ分散型SNSであるMastodon(マストドン)は500文字だし、Misskey(ミスキー)はなんと3000文字まで投稿できるようだが、そこまでの投稿なら、私はこのブログで記事としてまとめるような気がする。このあたりの感覚は個人的なものに過ぎないが、この300文字上限、ふぁいんさん的お気に入りポイントである。

興味があるものは”フィード”でまとめてみよう

先ほどの一覧には載せていなかったが、実はBlueskyには、Xにおける「ハッシュタグ」に相当する機能が存在しない。Xでは、「ハッシュタグをつけて投稿すると○○名様にプレゼント!」であったり、ハッシュタグを使ってイベントやライブ、配信の感想を呟いたりするのが当たり前の文化だが、Blueskyではそれができない。

その代わりに、「フィード」という機能が存在する。これは、ざっくり言えば、「特定のキーワードによる投稿の検索機能」で、例えば、「ふぁいん」で検索するフィードを作成した場合、「ふぁいん」という文言を含む投稿だけをずらりと並べることができる。

私も試しに、「ScenarioFeed」というフィードを作成し、「シナリオ」「台本」「ボイスドラマ」「朗読」という文言を含むものだけを一覧化してみたが、正常に機能しているように見えた。ハッシュタグと違い、気軽に付与したり覗いたりするできるものではないが、特定の分野に関心があり、定期的に眺めたいという場合には便利な機能だろう。一度作ってしまえば、毎回検索する必要がないのは地味にありがたい。

フィードの作り方は以下を参考にしてみるといいかも(ふぁいんさんはこれにもとづいて作成できたので実績有り)

Blueskyのフィードを作ってみた
SkyFeedのFeed Builderを使ってカスタムフィードをつくる

結論:私はBlueskyが好きだ

というわけで機能面を見てきたが、私の想いは見出しのとおりである。

まだ使い始めて数日なので、理解できていない機能や、気付いていないデメリットもあるだろう。だが、少なくとも私は、このBlueskyというSNSを使い続けたい気持ちになっている。

Xと比べれば、まだまだ人口は少ないが、今後の可能性は大いにあるだろう。例えば、仮に今後、Xの有料化がさらに進むなどすれば、ユーザがBlueskyに流れてくることは想像に難くない。今すぐ完全にBlueskyのみに切り替えることはできないが、将来的にはメインにしてもいいと思えるSNSだった。興味がある方は、始めてみると良いだろう。

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