「えぇええええええッ――――――!!!!??」
最後の一行まで読み切ったふぁいんは思わずそう叫んだ。とはいえ、時刻は深夜一時半を回ったところ。きちんとご近所さんへ配慮して、ボリュームを極限まで落としたささやき声での叫びである。
ふぁいんがウィスパーボイスを駆使してまで夜中に声をあげたのには理由があった。
それは約二時間前のこと――
「さて……いよいよ、読みますか」
二〇一七年三月八日。二三時。
ふぁいんは、十日ほど前から机上に置いたままの一冊の本と向き合った。
『ゼロの使い魔』最終巻。「ゼロの神話」という、実に最終巻らしい副題のついたライトノベルである。
(いよいよ、ルイズとサイトの物語が伝説……神話になるんだ)
初めてこの本を手にしたとき、ふぁいんはそんな感慨に包まれた。
『ゼロの使い魔』が伝説になる。ついに終わる。
そう思うと、それを読める喜びと同時に完結してしまう寂しさがこみ上げてきた。さらには天国の作者、ヤマグチノボル先生への感謝その他の思いも加わり、複雑な気持ちになった。
心の大渋滞。
結果として、本来であればすぐ読むはずだった気持ちは揺らぎ、仕事などの忙しさもあって、読むまでにこんなに時間を空けることとなった。
「……ルイズ、ありがとな」
机を見下ろすかたちで本を見つめていたふぁいんは、一人、その表紙に向かって呟いた。事情を知らない人が偶然この光景を目にしたならば、他に誰もいない部屋でライトノベルにお礼を言う姿にぎょっとしたかもしれない。だが、ふぁいん自身にとっては、それはごく自然で、率直な感謝だった。詳しく全ての思いを書き記すことはできないが――言葉にできない部分がそもそも多すぎる――間違いなく言えるのは、ルイズが、『ゼロの使い魔』がふぁいんという人間を形成する上で外すことのできない、かげかえのない存在だということだった。
ふぁいんは本を手に取った。ベッドの傍にあるライトをつけてから部屋の電気を消すと、そのまま毛布と掛け布団にくるまった。
今一度表紙を見る。ルイズが幸せそうにしている。サイトも幸せそうにしている。それだけで良い予感がした。
ふぁいんはついに、大好きなこの物語の、「終わり」を始めた。
記事後半に続く。なお、ここからはネタバレを含みますのでご注意ください。
てなわけで感想!
どうも、いきなり謎の小説風文章が始まって戸惑った皆様こんばんは、ふぁいんです。
いや、このほうがこう、僕の心情とかゼロ魔に対する思いとかが伝わりやすいかなと思って書いてみました。全て実話です。本当のことなので非常に書きやすかったです。そもそも主人公が僕なので動かしやすいですしね。
てなわけでここからはいつもの感じで記事を書いていきましょう。まずは、結局なぜ僕が読了直後に叫んだのかという説明からしますね。
それはずばり、最後が怒涛だったからです。なんといいましょうか、正直ちょっと置いてきぼりをくらった感じ。
えっ、えっ、そうなるの? えっ。
って、なりました。
いや、良いんですよ?良かったと思います。結局ルイズとサイトは幸せになったんでしょうから。でも一方で、少し思うところもあって。
まだ読んでない方のために(そんな人がこの記事を読むか分かりませんが)、ざっと展開を説明しましょうか。
1.ルイズたちの住むハルケギニアに、「風石の暴走」という人類滅亡の危機が迫っている。ハルケギニアの地下に眠る「風石」に精霊の力が蓄積されすぎたため、このままでは大地ごとめくれあがり、住む場所がなくなる恐れがある。また、残った土地を巡る戦争が起こることも予見され、いずれにしろ大勢の人が亡くなると思われる。
2.その惨事を回避するため、ロマリア教皇・ヴィットーリオは「聖地奪還」を提案する。聖地とはすなわち、虚無のゲートが開いた先の場所――始祖ブリミルの故郷にしてサイトの生まれ育った土地でもある「地球」である。
3.地球侵攻を実現しようとするヴィットーリオ。その背景には、地球への帰還を望んでいた始祖ブリミルの思いを実現しようという信者としての思惑があった。
4.当然、地球侵攻に反発するサイト。ルイズやアンリエッタも、地球人を滅ぼすというやり方に反対する。「単純な戦力では到底地球の兵器にはかなわない」と教皇の説得を試みるサイトだったが、ヴィットーリオはルイズの「虚無の魔法」、「生命(ライフ)」(核兵器並みの威力)で先制攻撃を仕掛ければ勝てると言い、あくまで侵攻の姿勢を崩さない。
5.教皇はルイズに協力させるため、「リーヴスラシル」の真実――その力が、命と引き換えに「虚無の担い手」に魔力を供給する能力であることをルイズに知らせる。そして、始祖の願いである聖地奪還を果たしさえすれば、虚無の力はこの世から失われ、サイトをリーヴスラシルの力から開放して救うことができると告げる。
6.サイトを救うため、地球侵攻を決めたルイズ。その頃サイトは夢を見る。使い魔のルーンに刻まれた六千年前の記憶。サイトはそこで、六千年前にも「風石の暴走」という危機が迫っていたことを知る。その原因が巨大な山ほどもある精霊石の塊であること、それを破壊するためにエルフの都市ごと「生命」の魔法で吹き飛ばしたこと、そして、それが原因で悲しい結末を招いたこと……。目覚めたサイトは、「精霊石の破壊」というハルケギニアを救う方法をルイズに伝えるべく、ルイズのもとへ向かう。
7.リーヴスラシルの力によって命尽きかけながらも、使用者に魔力を送ることができる機能を備えた相棒にして愛刀・デルフリンガーの力を借りてルイズのもとへ向かうサイト。精霊石を破壊すれば風石の暴走が止まることを告げるが、ルイズはそうしない。それでは虚無の力は失われず、サイトが死んでしまうためだ。サイトはなんとか止めようとルイズに近づく。その瞬間、ルイズは振り向き、微笑むと、一歩を踏み出した。デルフリンガーが自分の胸を貫くように。
8.その瞬間、世界から「虚無」が失われた。実は「虚無」を失わせるにはもうひとつの方法があった。それは、「ガンダールヴ」が主人を殺すこと。ルイズはサイトを救うため、自ら死を選んだのである。それは六千年前の「悲しい結末」の再来。かつて、ガンダールヴにしてリーヴスラシルたるサーシャは、自分の故郷を吹き飛ばされた怒りからブリミルを殺した。しかしそれは、ブリミルがそうなるように仕向けたことであった。ブリミルは愛するサーシャをリーヴスラシルの力から救うため、彼女が自分を殺すようにわざとエルフの都市を破壊したのである。それが原因で、自分の子孫とエルフがいがみあうことになるだろう未来を予想しながらも。
9.実はサイトが夢を見ていた頃、ルイズも同じ夢を見ていたのであった。夢で六千年前の真実を知ったルイズは、大勢の地球人を殺してサイトを生かすよりも、自分ひとりの死を選んだ。その場で呆然とするサイト。虚無の力は失われ、確かに生き残ったが、ルイズが死んでは意味がない。自分も死のうと決意する。しかしそこで、相棒・デルフリンガーが告げる。自分が命を与えられた意味を。そして、自分の命をルイズに与え、バラバラに砕け散るのだった。
10.全てが終わったあと、サイトはルイズと二人、ラグドリアン湖にやってきた。デルフリンガーの欠片を湖に沈めて弔うと、サイトは決心してルイズにプロポーズをする。虚無の力が失われた今、サイトが地球に帰る術はない。このハルケギニアでルイズと共に生きていくという決意の表れでもあった。
11.サイトが召喚され、二人が出会った地である学院の広場で、二人は挙式する。このまま二人はハルケギニアで幸せに暮らすと思われた。しかし、ヴィットーリオから「始祖の円鏡」が届いたことで事態は一転する。徐々に力を失いつつあるものの、いまだ虚無の力が残る円鏡を使えば、ひとりが通れるだけのゲートが作れるという。帰れる可能性に動揺するサイト。ガンダールヴでなくなったことも関係してか、弱気になり、家族に会いたいという思いが募る。そして、その思いを察したルイズ。二人は決断を下し、別々の世界で暮らす決意をする。お互いを永遠に愛することを誓いながら。
12.と、思ったら土壇場でルイズが「わたしも連れってって!」と言い、デルフっぽい声が「俺に任せな」的なことを言ったと思ったらふたりともゲートを通って消えちゃった!
……っていう感じなんですけど、どうでしょうか。いや、書き方に若干の悪意があるのは認めます。ただ、それくらいびっくりしたんですよ僕。
「えぇええええええッ――――――!!!!??」ってなりませんか、これ。いや、前述のとおり良いとは思うんですよ?幸せになってくれれば、ハルケギニアでも地球でも好きなところで暮らせばいいと思うんです。
ただ、とにかく驚いた。多分心情的には、ハルケギニアに残された側の人達と一緒だと思います。残ると思っていたルイズが突然サイトについていっちゃって、ゲートが消えて、もう二度と戻ってこないっていうのがね、もう急すぎて一瞬呆然ですよ。
これが、僕が叫んだ理由です。少しでも伝われば幸いです。
果たしてどこまでがヤマグチノボル先生の思惑なのでしょうか。おそらく、地球で暮らすという点は間違いないと思うのですが、こんな感じで正解なのかどうか。
まさかこの僕が最終巻にしてゼロ魔に批判的になるとは思いませんでしたが、大好きだからこそちょっともやもやしたというところ、ご理解いただければと思います。
最終巻、読めてほんとに嬉しいですし、きっとものすごく大変だったでしょうに代筆を受けられた方には感謝しているんですけど、どうしてもこう思ってしまいますね。
ノボル先生ならこの最後、どう描いたんだろうって。
ただ、全体としては非常に面白かったですよ!最後だけ、ほんとに最後だけびっくりしたというだけで。ルイズが死んでしまうところなんてもう、ちょっと泣きかけましたよ。生き返ったから良かったものの、ルイズがあのまま死んでたらかなり落ち込んでましたね。死別エンド、それはそれで好きなんですけど、ルイズにおいては喪失感が大きすぎる。だから、デルフには感謝ですね!
まあ、デルフもだいぶ好きなキャラクターですので、寂しいんですけど。
もしも!いないとは思いますがもしも!まだ読んでない方がいらっしゃいましたら、盛大にネタバレしましたけどぜひ読んで下さい。ルイズとサイトの神話、見届けてください!
最後になりますが、最終巻刊行に携わられました全ての皆様へ感謝を。こうして最終巻を読ませていただきましてありがとうございました!
謝辞
ふぁいんはブログを書き終えると、一息ついた。気づけばもう時刻は五時を回っている。今ブログを更新してもきっと誰も読まないなと考えて、まあそれでもいいかと思い直した。
結局、この記事は自分の思いを表現するためだけのものなのだ。書くことが目的であって、読まれなくても構わなかった。……無論、読んでもらえたら嬉しいし、それぞれの『ゼロ魔』に対する感想をコメントしてもらえたりなんかしたらもっと嬉しいのだが、まあそれはいい。
ひととおり推敲し、変換ミスなどがないことを確認すると、ふぁいんはカーソルを投稿ボタンに合わせる。だが、クリックの直前、ふと思った。
そうか、思いを表現する場なら、と。
そしてふぁいんはブログの末尾に、こう書き足した。
天国のヤマグチノボル先生、お元気ですか。天国からなら、こんな個人ブログでこっそり書いた感想でも届いていますか。届いていると嬉しいです。
先生から見て、この最終巻、いかがですか。僕は記事で書いたように、最後だけ若干惜しかった気持ちもあるんですが、良い終わりだったと思います。先生の頭にあったラストとは、どれくらい近いんでしょうかね。いずれ天国でお会い出来たら教えてください。あとサインもください。そして、もしこれが先生の描いたとおりのラストだったなら、惜しかったとか偉そうなこと言ってすみませんでした笑
先生の書くルイズには、これまでたくさんのときめきをいただいてきました。今やツンデレキャラなんてありふれていますが、やっぱりルイズはどこか特別で、格別に可愛いと思っています。釘宮ボイスだからじゃないですよ? いや、まあそれもなくはないんですが、「先生の書くルイズを演じる釘宮理恵」と出会ったからこそ、僕はここまでくぎゅ様が好きになったのかなって思う節もありまして。
そういう意味でも、先生には感謝しています。でも何より、この『ゼロの使い魔』という作品を生み出してくれて、ありがとうございました。ルイズを生み出してくれて、ありがとうございました。プロットも遺して、作品を託してくれて、最後まで読ませていただいて、ありがとうございました。
ルイズとサイトの愛のように、僕もまたこの『ゼロの使い魔』を一生愛することを誓います。いや、誓わずとも愛さずにはいられません。それくらい、魅力的な作品ですから。
ではまた、天国で。本当にサインくださいね!
ふぁいん
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