これを読めば、ざっくり本を読んだ気持ちになれてしまうかも?
忙しい皆様こんばんは、ふぁいんと申します。
当ブログでお届けする「ざっくり書籍まとめ」では、私自身のアウトップットをかねて、読んだ本をざっくり、短く、要点だけ、お届けしています。
今回取り上げた本
書籍名:面白ければなんでもあり : 発行累計6000万部-とある編集の仕事目録
著者:三木一馬
出版:KADOKAWA
出版年月日:2015.12
定価:1200円
ISBN:9784048657150
ざっくり書籍まとめ
この書籍で言われていること
面白さは主観だが、「多数に刺さる面白さ」を目指して動くことはできる
編集者という存在は裏方的なもので、通常、我々のような読者は、あまり意識しないでしょう。
ゆえに、我々にまで名前が届いている「三木一馬」という人は、希有な編集者と言えるのかもしれません。
書籍タイトルにもありますが、累計発行部数6000万部――2015年当時ですから、今はもっと増えていることでしょう――を誇る三木さんが手がけた作品は、ラノベ界、アニメ界にその名を轟かせる作品ばかりです。
- 『ソードアート・オンライン』
- 『とある魔術の禁書目録』
- 『灼眼のシャナ』
- 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 etc…
「読んだことがなくてもタイトルくらいは知っている」ほどに知名度のある名作たちを、次々と生み出した秘訣はなんなのか。
今回は、作品のつくりかたに焦点をあてて、まとめてみました。
1.三木流「プロットの構成要素」
小説を書く場合には、いきなり本文を書き始める、ということは、実はさほどありません。小説の設計図ともいうべき「プロット」というものが、本文の前段階として作成されます。
どういう世界観で、どういうキャラを、どんな風に動かして、最終的にどうなるか、というのを書き起こしてまとめたものが「プロット」なのですが、三木さん流の思考で考えていくと、プロットには以下の要素が含まれます。
家訓
その小説を「書きたい」と思ったときに生まれた”やりたいこと”。
創作をしていると、しばしば、当初やりたかったことからずれていくことがあるが、その際には原点たる「やりたかったこと」=「家訓」に立ち返る。そうしないと、いずれ迷い、最後まで書けなくなってしまう。
想定読者
作品を読んだときに”一番喜ぶ人”。作品が最も刺さる人。
「こういう展開、設定は”あいつ”が好きそう」と思って書いた人。””あいつ”は身近な人でも良いし、自分でもいい。
安全地帯からの冒険
ストーリーや設定を考える上での一要素。
絶叫マシンやお化け屋敷と同じように、絶対に安全なところから楽しむスリルが読書にはある。読者は、「自分がその立場だったら絶対乗り越えられないこと」を、読者の視点=安全地帯から追い、主人公と一緒になってわくわくハラハラするからこそ「楽しい」と感じるので、「死の危険」や「困難な状況」、「絶望」的な要素があるとよい。
トレンド
ストーリーや設定を考える上での一要素。ここでは、作品の「展開」や「方向性」を含めた物語のベクトルのこと。
上向きトレンドは、いじめられっ子が最終的に勝利するなどといった良い方向での逆転劇。
下向きトレンドは、いつまでたっても報われずに終わるような展開。
王道展開からずらそうとしすぎると下向きトレンドに陥りやすいが、人によって面白さの基準は様々なので、最後まで報われないからこそ良い、と評価される場合もある。
「想定読者」にとって、上向き、下向きどっちが「スッキリ」するのかを考えることが必要。
スッキリ感
ストーリーや設定を考える上での一要素。想定読者が作品を読んだときに感じる快感。
何をどうすれば「スッキリ」するのかを考える。
キャッチーさ
ストーリーや設定を考える上での一要素。音楽用語で、「人に覚えてもらいやすい」「親しみやすい」という意味だが、「まず作品に触れてもらう」ということを考えたとき、重要となる。
見せ場
ストーリーや設定を考える上での一要素。もっとも重要な驚きや、作品の武器となるような魅力が描かれている箇所。
まず大きく「冒頭の見せ場」と「終盤の見せ場」を考え、その間を埋めるように書きたいシーンを羅列していくとストーリーが完成する。
その際、書きたいものをすべて盛り込むのではなく、あくまで冒頭⇒終盤へとつなぐことを優先し、寄り道になってしまうものや、本来の道に戻りにくくなってしまう要素は除くことが必要。
2.魅力的なキャラとは
魅力的なキャラには、「共感できるかどうか」が非常に重要です。読者はキャラに自分を重ねて読んでいくことになるので、共感できたほうが、より、応援したくなるからです。
そして「共感できるキャラ」には、「憧れ」と「愛嬌」が含まれています。
憧れ
かっこよさ。困難な事件や突然のアクシデントも華麗に乗り越える人間像。
愛嬌
庶民的な要素。くすっと笑ってしまうような要素。
本書では、『とある魔術の禁書目録』の主人公である「上条当麻」を例に挙げています。
上条当麻への「憧れ
異能の力であればどんなものでも打ち消す右手・「幻想殺し(イマジンブレイカー)」で、強敵に立ち向かい勝っていく姿。
上条当麻の「愛嬌」
右手の力により「神の加護」すら打ち消す不幸体質や、スーパーの安売りを気にする庶民っぽいところ。
3.作品を書き上げるには
最後は、こうして作ったプロットを元に、「どうすれば作品を書き上げることができるのか」について、本文を引用して終わろうと思います。
プロの作家が数ヶ月のペースで何冊も作品を書けるのは、作家自身の才能や努力だけが理由ではありません。「書かなければいけない立場」にあるからこそ、「なんとしてでも書いてしまう」のです。
(p.87)
作品を書ききるコツは、「自分を後に引けない状況に置くこと」ですね。
+αな情報
・どっちにしよう、ではなく、どれだろう
キャラクターの設定に迷ったときは、自分の主観で「どっちがいいか」ではなく、「そのキャラならどうするだろう」という目線から考えるようにしましょう。メインキャラはもちろん、モブキャラひとりひとりも生きているので、行動や価値観にはつながりがあります。
・良い文章は、説明を説明と思わせない
アクションシーンを読んでいたら、自然と作品に必要な設定が頭に入っていた、というようなかたちが理想です。
・期待を裏切らず、不安を裏切る
読者が望んでいる方向性(主人公が最終的に勝つ、など)は裏切ってはいけません。ただ、その本筋の中でも、「予想以上」を与えてこそエンタメはエンタメになります。主人公をピンチに追いやることで読者を不安にさせて、それを良い意味で裏切る。それができてこそ、作品は面白くなります。
ふぁいんさんの感想
2月の書籍選びは悩みに悩み、そのせいでこの記事の投稿も遅れたわけですが、最終的には、いわゆる「ビジネス書」からは若干外れたような本をチョイスしました。本書は、筆者である三木一馬さんの自伝的な要素も含んでいるので、まとめ方に迷った結果、「物語のつくりかた」にベクトルを合わせてみたので、興味がない方も多いかもしれませんね。
ただ、私は一応物書きの端くれなので、色々と得るものはありました。特に最後の「作品を書き上げるには」という部分は強く刺さっていて、思えば、この「書籍まとめ」も、毎週やると宣言しているからこそ、頑張ってやれているわけなので、非常に納得しましたね。書いてあることをどこまで自分の創作物に生かせるかは分からないのですが、もし、私と同じように、今回のまとめから色々と感じた方がいましたら、ぜひ本書を手に取ってみることをおすすめします。もはや業界では神レベルの編集者だと私は思っているので、そんな方の考え方を1200円で聞けるのは非常にお得な気がしますね。
本自体も、ところどころ笑える感じに仕上がっており、非常に面白かったです。電撃文庫作品に触れたことがある人は特に楽しめるかもしれません。業界の裏側も見えるので、そういう部分でも興味深かったです。
ちなみに、三木さんは現在、この書籍を執筆されたときとは異なり、KADOKAWAを退社して「ストレートエッジ」という会社の社長をやっていたりします。ただ、担当作品は継続して担当されているようですし、ヒットメーカーなのは変わりません。本書は、情報的に古いところはあると思いますが、きっと考え方の根幹は変わっていないと思うので、創作で迷ったときの指針にしようかなと思います。
おわりに
ということでざっくりと本の内容をお伝えさせていただきました。
最後に、注意というか予防線というかをひとつ。
今回ご紹介した本の内容は、この書籍に記載されている情報のすべてではありません。
あくまでもこの記事で書いた内容は、「ふぁいんさんが個人的に大事だと思った内容のピックアップ」であり、私の主観も一部混ざっていますので、参考までにご活用いただければと思います。
それでは。
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