その魂に幸あらんことを

SE 波の音

テテ「(繰り返し小声で祈る)ヴォクタレ・リ・ファルントソ……ヴォクタレ・リ・ファルントソ……」

SE 近づいてくる足音

テテ「(繰り返し小声で祈る)ヴォクタレ・リ・ファルントソ……ヴォクタレ・リ・ファルントソ……」

SE すぐそばで立ち止まる

「(繰り返し小声で祈る)ヴォクタレ・リ・ファルントソ……ヴォクタレ・リ・ファルントソ」

ヌヅレ「(テテの祈りの最後の一回に声を重ねて)ヴォクタレ・リ・ファルントソ」

(間)

SE 波の音

ヌヅレ「……祈ってるということは、完成したんだな?」

テテ「……よくここが分かったね、ヌヅレ。ここは兄さんとの秘密の場所だと思ってたんだけど」

ヌヅレ「俺も連れてきてもらってたからな、ニムレのヤツに」

テテ「え、そうだったの? それはなんか、うん……そっかぁ」

ヌヅレ「悲しいか? 二人だけの場所じゃなくて」

テテ「……いや。ちょっとびっくりしたけど、ヌヅレなら納得。親友だもんね、兄さんの」

ヌヅレ「俺はお前ともよき友のつもりだけどな」

テテ「ふふっ、ありがと。僕もそのつもりだよ」

ヌヅレ「そいつぁ良かった。友情の一方通行ほど悲しいものはないからな。……で、最初の質問だが」

テテ「ああ、ごめん、完成したよ。ほら。……僕じゃまだ、ちょっといびつだけどね」

ヌヅレ「そんなことないさ。(完成品を見て)……いや……うん。まあ……ちょっとだけな?」

テテ「あはは、僕、ヌヅレの嘘がつけないとこ、好きだよ」

ヌヅレ「よせよせ。野郎からの告白なんてヌヅレさんは受け付けてねぇよ」

テテ「ふふっ……そうだね。うん。……そうだよね」

ヌヅレ「なんだ? その様子じゃまだ決心ついてないのか? もうすっかり口調まで変えてるってのに」

テテ「んー……まあ、本音を言えば、ちょっと。急に生き方を変えろって言われてもね。昔から教えられてきたことだから、頭では分かってるんだけど」

ヌヅレ「ま、そうだよな。大きな声じゃ言えないが、俺も変だとは思うよ。他の家から婿を呼ぶとか、やりようはある気がするんだが。いやそもそも、別に女が長だって……むぐっ(口を手で覆われる)」

テテ「(ヌヅレの口を手で覆いながら)ありがとう、ヌヅレ。それ以上は良いよ。本格的に決心がゆらぎそうだ」

ヌヅレ「……悪い。ちょっと本音が出すぎた」

テテ「良いんだ。僕のことを想っての言葉なのは、伝わってきた」

ヌヅレ「……これから一緒に頑張ろうぜ。慣れないことは俺が助けてやる」

テテ「ありがと。ヌヅレが助けてくれるなら、うちも何とかやっていける気がするよ」

ヌヅレ「任せとけ! ……んじゃまあ、そろそろ行くか。お前の作ったその壺と一緒に、ニムレのヤツを送ってやんなきゃ」

テテ「最期の炎で本当に完成だね。……兄さん、気に入ってくれるかな?」

ヌヅレ「家族が心を込めたんだ。きっと気に入るさ」

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本作は、朗読、ラジオドラマにご活用いただけるシナリオとして、「HEARシナリオ部」の活動内で作成いたしました。

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○クレジット
シナリオ作者:柚坂明都(ふぁいん) https://hear.jp/finevoices
シナリオ引用元:それはまるで大空のような https://fineblogs213.com/may-his-soul-be-blessed

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