しゅーまつ

ユウマ 「うおっ、風つよ!」

イツキ 「今日は一段と風つよいねー」

ヒマリ 「きゃっ! 目に砂入ったぁ! サイアク! 何で毎日屋上に来なきゃなんないのよ」

イツキ 「僕は良いと思うよ。ずっと室内にいるのも体に良くないじゃない」

ユウマ 「そうだぞ。大体、最初はヒマリも賛成してただろ」

ヒマリ 「退屈しのぎになるかと思ったのよ。でも、暑いし日焼けするし髪がボサボサになるし、良いコトなんてひとつもなーい」

ユウマ 「確かに風は強いな……さっさと物陰に行くぞ」

(移動。間を開ける)

ユウマ 「おいしょっと。日陰はだいぶマシだな」

ヒマリ 「いつも思うけど、そんなとこに寝そべって汚くない?」

イツキ 「僕は良いと思うよ。空が綺麗だし」

ユウマ 「ヒマリもどうだ?」

ヒマリ 「あたしはパス」

ユウマ 「ったく、ノリが悪いぜ……」

(会話が途切れる。少しの間)

ユウマ 「……なあ、お前ら」

イツキ 「ん?」

ヒマリ 「なに?」

ユウマ 「世界が今日終わるとしたら、あなたは何を食べますか? って質問あるじゃん?」

イツキ 「よく聞くやつだね」

ユウマ 「俺さ、単純にハンバーグが好きだからハンバーグって答えてたんだけどさ」

ヒマリ 「え、なにあんた、よりにもよってハンバーグなの。お子さま~」

ユウマ 「うるせぇ、それは別に良いだろ」

イツキ 「僕は良いと思うよ。美味しいもんね、ハンバーグ」

ユウマ 「だろ? 欲を言えばチーズインハンバーグが良いんだよな。熱々の鉄板の上で、じゅうじゅう焼いたハンバーグをさ、ナイフで切ったら飛び出すチーズ。最高じゃん」

ヒマリ 「ちょっと! 無駄にお腹減るじゃん。やめてよ」

ユウマ 「あれれ~? ハンバーグはお子さまの食べ物だったんじゃないんですか~?」

ヒマリ 「……マジでうっさいわね、このでかいガキ」

イツキ 「僕は良いと思うよ。相変わらず面白いね、ユウマくんは」

ヒマリ 「あんたは相変わらず全肯定ね、イツキ」

ユウマ 「いや違うんだよ俺はそんな話がしたいんじゃねぇのよ。最後の日に食べるメシな。あれさ、考えが足りなかったなと思ってな」

ヒマリ 「だからガキって言ってるじゃない」

ユウマ 「おうヒマリ、お前は一旦黙っとけ」

ヒマリ 「あんたの前置きが長いのよ」

イツキ 「僕は良いと思うよ。ちゃんと一から説明するのって、大事だよね」

ユウマ 「ありがとなイツキ。でもお前も一旦黙ろう。オホン。……まあつまりだ、考えが足りなかったってのはその、俺はなんかこう、地球最後の日ってやつを、地震とか火事とか、そういう、突発的にくる系のやつだと思ってたって話なんだわ」

他二人 「(黙る)」※ユウマ役が間をとる

ユウマ 「……あー、その、だから、つまり、本当の地球最後の日ってやつはじわじわ起きていった先に行き着くんだってな、ことにな、気付いたというわけで」

他二人 「(黙る)」※ユウマ役が間をとる

ユウマ 「つまりはさ、食糧はじわじわ足りなくなっていって、人口もじわじわ減っていって、そんでもってじわじわ終わりの雰囲気が漂ってくるもんなんだなって分かったわけで……あの、喋りにくいんで何かリアクションくれません?」

ヒマリ 「あんたが黙れって言ったんじゃない」

ユウマ 「それはそうなんだが……まさかそんな石像みたいなノーリアクションになるとは思ってなかったんだよ」

ヒマリ 「だってあんたがあまりにもつまんない話をするから……。何今さら、至極当たり前のこと言ってんのよ」

イツキ 「僕は良いと思うよ。雑談できるって、余裕の表れだし。このビルから見える景色もだいぶ砂漠になっちゃったけど、まだ僕らには余裕がある。この三人でいられるからだと思うんだ。そう思うとほら、これはこれで綺麗な景色に見えてこない?」

ヒマリ 「全肯定もここまでいくとポジティブね。あたしには、滅びの世界にしか見えないわ。そう簡単に死んでやる気はないけどね」

ユウマ 「そうだな。じゃ、いつもの記録だけして、今日も足掻きますか。えーと、今日で何日目だ?」

イツキ 「この壁もいっぱいになってきたねぇ」

ユウマ 「それだけ生き延びられてるってことだ。明日からまた新しい一週間だし、今週も生き残るぞ、お前ら」

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本作は、2023年10月8日に開催した「HEARオフ会」内、「THE FIRST ACT」用の台本として制作いたしました。

通常のHEARシナリオ部作品と同様、朗読、ラジオドラマにご活用いただけるシナリオとして、ご使用いただけます。

ご使用の際は、説明欄等に、以下クレジットをご記入いただけますと幸いです。

また、音声投稿サイト「HEAR;」での投稿時には、タグに「しゅーまつ」もしくは「HEARシナリオ部」と入れていただきますと、作成いただいたコンテンツを見に行くことができるので嬉しく思います。

○クレジット

シナリオ作者:柚坂明都(ふぁいん) https://hear.jp/finevoices

シナリオ引用元:それはまるで大空のような https://fineblogs213.com/syumatsu

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