面接

面接官 「では、次のグループの方々、どうぞ」

(他3人、ぞろぞろと入ってくる感じで思い思いに)

盗賊 「ようやく俺の番かぁ」
騎士 「失礼する」
魔王 「ふん、矮小な部屋よ……」

面接官 「それではただ今より、職業変更のための面接を始めさせていただきます。なお、近年の転職希望者の増加に対応するため、三名ずつの集団面接となります点をご承知ください」

盗賊 「おう、前置きは良いからよ、さっさとやろうや」

面接官 「威勢の良い方ですね。それではあなたから順番にお伺いしていきます。まずは皆様お座りください」

騎士 「面接官殿」

面接官 「はい、何かございましたか?」

騎士 「改めてだが確認させて欲しい。この面接を受ければ、我々は希望の職業に転職できるのだな?」

面接官 「そうですね、事前に説明があったかと思いますが、確実に希望通り、とはならない可能性もございます。皆様の資質が、必ずしも皆様のご希望に適しているとは限りませんからね。ですが、できるだけご希望に添えるよう手配する予定です」

騎士 「分かった。ご説明いただき感謝する」

面接官 「他にご質問がある方がいればどうぞ。……よろしいですか? それでは始めさせていただきます。まずは……そちらの方から」

盗賊 「おう、さっさと頼む」

面接官 「お名前と、現在のご職業をお願いします」

盗賊 「ガレンだ。職業は、盗賊、だな」

面接官 「ありがとうございます。履歴書を拝見しますと、初仕事は八歳で、窃盗、とありますが、具体的には何を盗まれたんですか?」

盗賊 「近所にあったパン屋からパンを二切れ、だな。あの頃は食うモンがなくてよ。弟の分とあわせて盗んだ」

面接官 「なるほど、そこから盗賊の道に進まれた、と。ちなみに最近で一番大きなお仕事って何をされました?」

盗賊 「仲間と一緒に、移動中の貴族の馬車を襲ったのが一番でかいヤマかな。護衛もいたがよぉ、弱すぎて笑っちまったぜ。へっへっへ」

面接官 「あ、盗みだけでなく戦闘のご経験もおありなんですね」

盗賊 「ったりめーだろ。自慢じゃねぇが、そこらの騎士には負けないねぇ」

騎士 「貴様ッ、騎士を侮辱するか!」

盗賊 「おーこわ。そんな目で睨むんじゃねぇよ、き・し・さ・ま」

面接官 「はいはい、面接中なのでそこまでにしていただいて。えーと、ガレンさんは腕に覚えあり、と。ありがとうございます。最後に、転職希望の職種を伺えますか?」

盗賊 「おう。俺はな、門番になりてぇんだ。用心棒でもいい。実は今度、弟が結婚するらしくてよ。そろそろ俺も足を洗って、ちゃんとしたシノギをしたくてな」

面接官 「なるほど、大変よく分かりました、ありがとうございます。それでは次にお隣の方、お願いいたします」

騎士 「私だな。イザベル=アークライト。職業は騎士をしている。帯剣していないのがもどかしいよ。剣さえあれば隣の盗賊を叩っ切ってやったのに」

面接官 「面接中はいかなる身分、職業であってもその身は保護されることになっています。ご了承ください」

騎士 「分かっているよ。取り乱してすまない」

面接官 「いえいえ。それで、えーと、イザベルさんは……ああ、由緒正しい騎士のご家庭なんですね」

騎士 「そうだ。曾祖父の代に騎士として叙任じょにんされてな。祖父の代でも功績を挙げたため、イザベル家は永代騎士として王家の守護を担っている」

魔王 「ふん、守護などと笑わせる。あの程度の警備など、我が魔軍の前には何の意味もないと言うのに」

騎士 「……なんだ貴様は」

魔王 「ふん、事実を突かれて癇にさわったか。すまないな、あまりに笑える話だったもので、つい声が出てしまった」

面接官 「はいはい、そこまでです。先ほども注意させていただきましたが、面接中なのでお静かに。ご自分の番以外は発言を控えてください。すみませんイザベルさん、話を戻しましょう。お伺いする限り、転職されるなんて勿体ないように思えますが、転職先のご希望はなんでしょう?」

騎士 「それは……だな。その……私のような剣しか取り柄のない者には難しいかもしれないのだが……」

面接官 「そこの判断はお任せください。そのための我々『転職支援室』ですから」

騎士 「そ、そうか……では言うが、ま、魔法使いになりたいのだ」

面接官 「ほう、魔法使い。よろしければ理由を伺っても?」

騎士 「……んしん、したくてな」

面接官 「はい? すみません、もう一度お願いできますか?」

騎士 「だからっ……その……へんしん、したいのだ。魔法使いは、するんだろう? 私は観たぞ、かけ声と共に光に包まれ、美麗な衣装に変身する魔法使いの姿を」

面接官 「……あー、なるほど。そちらですか。はいはい、なるほどなるほど。となると、厳密には魔法使いではありませんね」

騎士 「何ッ! 違うのか!」

面接官 「はい。イザベルさんがおっしゃっているのは『魔女っ子』ですね」

騎士 「そ、そうなのか……そうか、あれは『魔女っ子』と言うのか」

面接官 「はい。ですので、ご希望を『魔女っ子』に変更しておきますね」

騎士 「うむ、よろしく頼む」

面接官 「はい、それでは次の方、お願いします」

魔王 「ようやく我の番か。この我を待たせるとは、命知らずな奴よ」

面接官 「お待たせしてしまって申し訳ございません。では、お名前とご職業をお伺いいたします」

魔王 「デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム。魔を統べる王、魔王である」

面接官 「これはこれは……いやあ、驚きました。履歴書を拝見したときから、まさかと思っておりましたが、そうですか」

魔王 「ふん、魔王が目の前にいるのだ。驚嘆するのも無理はない。むしろ、分かっていながら受け入れた度量にこちらが驚くくらいだ。誇って良いぞ」

面接官 「いえ違うんです。まさか本当に、名前がしりとりになっているなんて、と思いまして」

魔王 「……何を言っているのだ貴様は」

面接官 「念のためですが、お名前はデモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム、で、お間違えなかったですね?」

魔王 「そうとも。己の名前を間違えるはずもない」

面接官 「ちなみに倍速で言えますか?」

魔王 「……質問の意味がわからんぞ、人間」

面接官 「ああ、つまり普段の二倍の速さで言えますか、ということです。もちろん正確に二倍でなくとも大丈夫ですよ。大体で構いません」

魔王 「そういうことではないのだが……まあいい。とにかく早く言えば良いのだな? (早口)デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム。……どうだ?」

面接官 「素晴らしい! さすが魔王様です。その調子で三回繰り返せますか?」

魔王 「(三回)デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム」

面接官 「ワンダホー! では、今度は一度でいいので、少し発音よくお願いします」

魔王 「(英語風に発音よく)デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム」

面接官 「エクセレンツ! それではギャルっぽく!」

魔王 「(ギャル)デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム~的な?」

面接官 「マーベラス! それでは最後に可愛くどうぞ!」

魔王 「(最高に可愛く)デモクリウス=スカイフォージ=ジルブレッド=ドグラス=スクルム、だぞ♡」

面接官 「よく分かりました、ありがとうございました」

魔王 「おい待て貴様! 我だけ何かおかしくないか?」

面接官 「いえいえ、完璧でしたよ。それでは皆さん、結果をお待ちください」

魔王 「おいちょっと待て! 我だけ希望も聞かれていないぞ! おい! 離せ貴様ら! おい! くそ、なんでこいつらこんなに力が強いのだ! 待ってくれ、我のお菓子屋さんになる夢はどうなるのだ! おーい!(だんだん小さく)」

面接官 「皆さん、お疲れ様でした~」

(一呼吸おいて)

面接官 「ふう……えーと、そうですね。騎士のイザベルさんは問題ないでしょう。魔女っ子確定です。フリフリの衣装で、ニッコニコの笑顔を浮かべながら頑張ってくれることを期待しています。魔王様はそうですね、あのポテンシャルはアイドルにしましょう。大丈夫、アイドルの趣味がお菓子作りなんてぴったりじゃないですか。滑舌も良いので、ドラマなんかもいけちゃうかもしれないですね。そしてガレンさんは……ま、盗賊なんで普通に逮捕ですね。犯罪者なんで。罪を償ってからまた来てもらいましょう。転職先は、囚人ということで、お願いしまーす」

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本作は、2023年10月8日に開催した「HEARオフ会」内、「THE FIRST ACT」用の台本として制作いたしました。

通常のHEARシナリオ部作品と同様、朗読、ラジオドラマにご活用いただけるシナリオとして、ご使用いただけます。

ご使用の際は、説明欄等に、以下クレジットをご記入いただけますと幸いです。

また、音声投稿サイト「HEAR;」での投稿時には、タグに「面接」もしくは「HEARシナリオ部」と入れていただきますと、作成いただいたコンテンツを見に行くことができるので嬉しく思います。

○クレジット

シナリオ作者:柚坂明都(ふぁいん) https://hear.jp/finevoices

シナリオ引用元:それはまるで大空のような https://fineblogs213.com/interview

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