――あれは、2026/1/6のこと。
「ちょっと厚かましいお願いなんですけど、短編小説をひとつ、ウチの文芸サークルで出せませんか」
正月休みの余韻を引きずる私のもとに、5年来の盟友からそんな連絡が飛んできた。
この人はいつも突然だな……と思いつつ、カレンダーを見る。今週を駆け抜けると、その先に赤い月曜日が見えた。嫌われ者の黒い月曜日とは違い、赤いやつは大好きだ。私は少し考えて、こう返した。
「いいですよ。幸い今週末は三連休なので、そこでパッと書いたやつくらいで良ければ」
こうして私、柚坂明都は、友人の同人誌に参加することが決まった。
『白紙文学』発売
どうもこんばんは、シナリオクリエイターの柚坂明都こと、ふぁいんです。
今回は記事タイトルにあるように、Kindle本の宣伝です。
小説風に書いた経緯の通り、私、同人誌に参加しまして。
それがこのたび発売になりましたので、お知らせさせていただきます。
価格は100円、しかもKindle Unlimitedご契約の方であれば無料で読めますので、Amazonポイントが100ptほど余っている方、Kindle Unlimited契約者の方は読みやすいのではないかと思います。
もちろん、100円払ってくださる方も大歓迎ですが、あくまでアマチュア集団の書いた同人誌なのをお忘れなく。とはいえ個人的には、さすがに100円分以上の価値はあると思います。
特に私のシナリオを日頃から読んでくださっている方であれば、「らしさ」は十分に感じていただけると思いますので、よろしければお手にとっていただけると幸いです。
収録されている作品は4作品。あらすじと、私の感想をまじえつつご紹介いたします。
1. 海辺を走る男女三人(吉村トチオ)
【あらすじ】
地味で暗くてじめしめしている――そんな風に自分を評する17歳の少女・小熊マナは、自分の彼氏となった少年・鳥井草介のことを訝しんでいた。
容姿端麗で人気の高い彼が、こんな自分に告白してきたのには、何か理由がある。
頑なに地元でのデートを避ける姿や、怪しい噂――草介がかつて、人を殺したという――が彼女の疑念を深くする中、ある日、彼はマナに告げた。
「会わせたい人がいる」
そうして連れられてきた古びたアパートで、マナに明かされる草介の過去。彼の口から語られたのは、かつてこのアパートで殺されたという少女・アンゲの存在だった。草介の胸に秘められたアンゲへの思い、そして、彼の真の目的とは――
【ふぁいんさんの感想】
ジャンルとしては “サスペンスホラー” になるのかなと思います。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、殺人事件にホラー・オカルト的な要素を掛け合わせた作品になっていて、一連の不可思議な出来事を通じて、草介が持つ愛情故の利己的な執着心と、マナの精神的な危うさを表現した作品になっていると感じました。皮肉の効いたオチはコミカルさを含んでおり、それでいて残酷ですので、吉村トチオを知る私としては「らしさ」を覚えましたね。
作品全体としては、ひとつの短い場面が次々に切り替わっていくような構成になっており、文学というイメージと比較して、かなりテンポ良く読めるのが魅力かと思います。最初の収録作品として、読み手にハードルを感じさせない文体になっている印象です。ただし読書家の方からすると、逆にそれがチープに見える可能性はありますね。短編にしては少々細切れが過ぎるかな、とも思いました。そういった点含めて、感想いただけると喜ぶと思います。
2. 境界線の栞(柚坂明都)
【あらすじ】
マカシは夢から目覚めた。西暦2024年の日本で暮らす「真樫太郎」としての夢は、今回もつらかった。社会の歯車として必死に働き、家に帰れば眠るだけの毎日。代わりに得られるのは僅かな給金のみで、憧れる労働からの開放には少しも届きそうにない――そんな、苦しくて “最高な” 夢。
「コフィン」と呼ばれる集合住宅の一室でその身を起こしたマカシは、高度に発達したサポートAI――「クリス」に話しかける。マカシが生きる “現代” は、すべての労働をAIが担い、人間は、ただ生きるだけの世界になっていた。
誰も彼もが、自由な時間を過ごせる世界。何もしなくても、生きていくことが可能な世界。
……ただしその自由には、制限もある。
果たしてこの世界は理想郷か。そんな世界で見出す、マカシの幸せとは――
【ふぁいんさんの感想】
自分の作品なので感想というのもおかしいのですが、自己評価としてはよく書けた部類だと思っています。100点とは到底言えないまでも、人様にお金を払っていただいても良いだけのものは書けたつもりですね。お気に入り作品の仲間入りをしました。
ジャンルとしては “ディストピアSF” になるのかなと。とはいえ読み味としては前向きで、明るいものに仕上がったと思っており、暗く不快な印象はないかと思います。どちらかというと未来パートより、前半の現代パートのほうが苦しい気持ちになるかも笑
詳しくはラジオでも語っていますので、裏話などご興味がある方はそちらでどうぞ。
3. メイメイ(いけだ)
【あらすじ】
歳は4歳か5歳の頃。
孤独と退屈に耐えかねて外に飛び出した良介は、疎外感を抱えて辿り着いたちいさな公園で、不思議な声に導かれる。引き寄せられるようにやってきたのは、公園の隅にある砂場だった。
不思議なことに、誘うような声は砂の下から聞こえてくる。言われるがままに掘り進めると、そこから現れたのは、グレーのサマーニットに身を包んだ、柔らかく、温かく、そして美しい女性だった。
これは、孤独で愛情に飢えた少年と、砂に埋もれた不思議な女との、愛と欲、そして成長の物語――
【ふぁいんさんの感想】
作者のいけださんは、今回の短編集において私が唯一知らない方で、興味深く読ませていただきました。ジャンルとしては、難しいですが “エロティックホラーヒューマンドラマ” とでも言うのがよいでしょうか。
砂に埋もれ、上半身の一部しか露呈していないという謎の美しい女の存在は、口裂け女や八尺様などといった街中の怪異を想起させるものです。彼女は幼い良介を誘い、良介はその色香に溺れていきます。母性への憧憬を持った幼い少年が性に目覚め、成長するごとに黒い欲望に支配されていく様子を表現した作品となっており、4作品の中では最も直接的でエロティックでしたね。エロを通じた成長というものを巧みに描いた作品となっています。表現的に忌避感を覚える方もいそうではありますが、個人的に文学とエロは切り離せない印象(偏見)を持っているため、さもありなん、というところ。
ひとつだけ言わせてもらえば、オチだけは少々残念に思いました。読まないと分からない感想ですが、
アパートが建ったところで終わっておけばとても綺麗だったのに。
というのが率直な感想です。そのあとの部分は、個人的には蛇足に感じましたね。独自の世界観をうまく構築できていたのに、安っぽく、ありきたりなオチになってしまったかなと。はじめましての挨拶すらしていないのにこんなことを言うと二度とコラボしてくれなさそうですが、感じ方は人それぞれですのでご容赦いただきたく……笑
ぜひあなたもご一読いただいて、どう感じるかをお確かめください。
4. 詩的で私的なスポークスマン(三片門重)
【あらすじ】
「創作法」が制定されたのは20年前のことだ。AI作品の氾濫からクリエイターを守るという思想が、ついにここまで行き着いた。音楽、映画、漫画、ゲームなど、広義にコンテンツを鑑賞する、もしくは体験する娯楽作品は、すべて「創作局」の認可がいる。認可外の創作物は「違法娯楽」として取り締まられ、厳しい処分を受けることになったのだ。
長谷川は、そんな「違法娯楽」を監視し摘発する「監視局」に勤めていた。報告数トップ、優秀な職員として仕事をこなす長谷川は、ある日、同僚の尾藤から1枚の違法チケットを渡される。
それは、 “風の詩人” の異名をとる作家、筆無 一善の個展チケットだった。
違反者・仙谷 悠里から押収したというそのチケットを片手に、長谷川は潜入捜査に赴く。
そこで彼女を待っていた、筆無 一善からの言葉とは――
【ふぁいんさんの感想】
昨今、無視できない存在となっているAI。私も私でそこから着想を得て未来を予想したわけですが、三片さんもまた、別の方向で未来を描いていました。それがこの作品です。
人間社会の変容や経済からの開放を軸に描いた私とは違い、この作品はより身近な問題をテーマにしています。創作物のあるべき姿とは何なのか、クリエイターとは何なのか、そういった問いに対するメッセージを感じる作品になっていると思います。
ジャンルで言うと “社会派近未来SF” といったところ。ここまでの3作品には共通するテーマとして「愛情」があったのですが、そこから外してくるのもまた、三片さんの良さだと思いました。言ってしまえばありきたりですからね、愛というテーマは(人間から切り離せないものではありますけど)
表現力、描写力、文章力、キャラクター性、メッセージ性など、全てが高いレベルにある作品でした。ジャンルとして近かったからこそ、正直言って負けたなあ、という感じです。特に読みやすさはこちらのほうが圧倒的に上かと。最後にふさわしい作品でした。
終わりに
改めて、文芸サークル「白紙文学」が贈る同名短編集『白紙文学』、皆様よろしければお手にとっていただければと思います。
紹介がてら感想を述べてきたことで、なんとなく私の中でどういう順位付けになったのかも透けて見えてしまったような気はしますが笑
とはいえ、評価するのは受け手である皆さんです。あくまで私の中ではこういう評価になったというだけで、嗜好性は人それぞれですから、あまり引っ張られず、素直に味わっていただければと思います。
なお、そもそも「白紙文学」ってどういうサークルやねん、という点に関しては、私もよく分かっていないのでお答えできません笑
もしかすると書籍版では、あとがき等々で語られているのか……(ふぁいんさんは最終稿の本文部分のみPDFで読ませていただいたのみなので、書籍版がどうなっているか正確には知りません)
メンバーは5人いるというのをうっすら聞いたのですが、蓋を開けてみたら2人しかいなかった(いけださんと私はゲスト)ので、もしや5人いるというのはトチオさんの妄想なのではないか、と疑っています笑
あとの3人が今後出てくることはあるのか、そもそも次があるのかすら分かりませんが、もしよろしければ応援してあげてください。
そして最後に、トチオさんへ。
こういう同人誌に寄稿するのって、マジで10年振りくらいだったので楽しかったです。
ありがとうございました!


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