日曜日の夜。というより、日付が変わって月曜日となった、深夜二時過ぎ。
僕は泣きそうになりながら、布団にくるまっている。
「働きたくない……働きたくない……働きたくない……」
早く眠らなければ、という焦りがいつしか労働への拒否反応へと変わって、口からこぼれ落ちる。六時には起きなければならないのに、一向に眠れる気配がなかった。そうしている間にも睡眠時間は刻一刻と短くなり、それがまた、ネガティブな感情へと変わっていく。
ここのところ、日曜日の夜はいつもこうだ。日付が変わる前に布団へ入っても、一向に眠れないまま時間を過ごしてしまう。まるで、眠らなければ明日はやってこないとばかりに、体が意識を手放すのを拒否する。おかげで、一睡もできないまま会社に行くこともしばしばあった。
もちろん、そんな状態が健康に良くないことは僕も分かっていた。仕事にだって支障が出る。幸いにも、今のところ大きなミスはせずに済んでいるが、このまま続けば、それだって怪しい。だからこそ必死に眠ろうとするのだが、眠ろうとすればするほど意識は冴え、現実が浮かび、涙が溜まる。もはや自分でも理由はよくわからないまま、とにかく会社に行きたくないという感情だけが渦巻いていた。
このまま会社を辞めてしまえばどうだろう、という強い欲求が心に浮かぶ。だが、辞めるとして、生活はどうなるというのだ。上がらないどころか、むしろ下がっていく給料に希望がないのは確かだ。だが、そんなものでもゼロよりはマシだ。僕たちは、働くことで生きている。働くことでしか生きていけない。だから働くのだ。明日を生きるために会社に行くのだ。
……そこまでする必要が、どこにあるのかは分からないけど。
――ピピピピ
スマートフォンから、起床時間を告げるアラームが鳴った。布団から顔を出せば、窓の外はまだ暗かった。冬の空には、なかなか夜明けがやってこない。
あんなに眠れなかったのに、いざ布団から出るとなると体が重かった。今になって眠くなってきているような気もする。だが、僕はのそのそと身支度を始める。部屋の中は冷たく、着替えも冷えていて、体から熱を奪う。このまま全ての熱を奪われたなら、僕は会社に行かなくて済むのだろうか。願わくばそのまま、暖かくなるまで眠っていたい。
春は、いつやってくるのだろう。僕は、それを待たずにはいられなかった。
———————
本作は、朗読、ラジオドラマにご活用いただけるシナリオとして、「HEARシナリオ部」の活動内で作成いたしました。
現在、HEARシナリオ部からACTシナリオ部への名称変更、ならびに公式サイト公開に伴いまして、公式サイト上のシナリオページをマスターとしております。
概要欄等に作品URLを載せていただけます場合は、以下ページにしていただけますと幸いです。
(ACTシナリオ部変更前にリンク済の作品につきましてはそのままで問題ありません)
コメント